【有識者からのメッセージ】カーボンニュートラルに向けてのLPガス業界への期待 角田憲司氏

カーボンニュートラルに向けてのLPガス業界への期待

角田憲司氏

エネルギー事業コンサルタント
中小企業診断士 角田 憲司
中小企業アドバイザー(高度化事業支援)

 LPガスは化石燃料の中でもクリーンな燃料であることから、たとえばボイラーにおける重油からLPガスへの燃料転換や、エコジョーズ、ハイブリッド給湯器、エネファーム、GHPなどLPガスを用いた高効率なガス機器・システムの普及を促進させることは、「お客さまの低炭素化」に貢献するのみならず、「地域全体の低炭素化」にも貢献する。LPガス事業者においては、この「2つの貢献」を意識してLPガスの普及に取り組んでほしい。

 また、2050年のカーボンニュートラル達成に向けては、お客さまにお届けするガスを化石燃料であるLPガスからカーボンフリーとなる合成燃料型の「グリーンLPガス」に置き換えることで、お客さまが使用されている機器をそのまま使いながら、「お客さまと地域全体の脱炭素化」に貢献できる。
ただし、電力・都市ガスや自動車用燃料での脱炭素化と同様、LPガス分野でも脱炭素化を図るにはかなりの時間を要する。したがってその間、海外のカーボン・クレジットでCO2をオフセットした「カーボンニュートラルLPG」や国内のJ-クレジットによりオフセットしたLPガスにより、環境価値をお客さまに積極的に提供する必要があり、当面は、この充実が強く望まれる。お客さまにクレジットでオフセットしたLPガスを選んでいただくことは、直接的な環境価値提供に加えて、ご採用いただく過程を通じてお客さまのカーボンニュートラル意識の向上にもつながる。LPガス事業者においては、この点も意識して、お客さまへのカーボンオフセット提案を積極的に行ってほしい。

 さらにLPガスは「自立稼働が可能な分散型の供給形態」であることから、都市ガスや電力のようなネットワーク型に比べて災害(地震災害による供給途絶、気象災害による停電など)に強く、地域のレジリエンス(強靭性)に多大な貢献ができる。加えて避難所・学校など需要地に置かれたLPガス非常用電源機は、単なる災害対応のみならず、今後は地域マイクログリッドなど新たな分散型エネルギーシステムに組み込まれることで、より高度なレジリエンス体制の構築にも貢献する。LPガス事業者においては、このような「レジリエンスの高度化」にもチャレンジしてほしい。

 一方、このような貢献の担い手となるLPガス事業者は、地域と共に発展することで地域貢献を果たしてきた「代表的な地域企業」であり、地域の脱炭素化のみならず、地域活性化など「持続可能な地域づくり」にも貢献できるポテンシャルを持っている。
これから日本の地域社会は、「脱炭素・カーボンニュートラル化と「人口減少・過疎化」が並行して進む。その中にあって、地域のLPガス事業者は、「カーボンニュートラル」と「地域の持続可能性」の両方の課題解決に取り組む位置づけにある。そのことを自覚し、今後も積極的な取り組みを行ってほしい。

プロフィール
・1978年東京ガスに入社し、家庭用営業・マーケティング部門、熱量変更部門、卸営業
 部門等に従事。
・2011年千葉ガス社長、2016年日本ガス協会地方支援担当理事を経て、2020年4月
 よりフリーとなり、都市ガス・LPガス業界に向けた各種情報の発信やセミナー講師、
 個社コンサルティング等を行っている。
・68歳。愛知県出身。
・連絡先 : ktsunoda7817@outlook.jp

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